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麻の火祭りと祓いの文化

By 2025年11月10日No Comments

日本各地に残る「麻の火祭りと祓いの文化」

 ― 麻を焚き、清め、つなぐ ―

古来、日本人は「火」と「煙」を通じて、見えない世界とつながってきました。
迎え火・送り火、どんど焼き、神棚の清め――これらの行為にしばしば用いられてきたのが、『麻(あさ/大麻および麻茎からつくるおがら・麻苧)』です。

地域ごとの習俗とその意味を整理してゆきます。


「おがら(麻がら)」と迎え火・送り火

お盆の迎え火・送り火に用いられる材料として、古くから おがら(麻の茎の皮を剥いで乾燥させたもの) が使われてきました。

おがらを焚き、先祖の霊を迎え、また見送ってきました。

それは「霊の道しるべ」「穢れを祓う火」として、折々の祈りに役立ってきたのです。

送り火

迎え火・送り火でのおがら使用は、現代でも地域の祭礼説明や自治体資料に記述が見られます

 



神道と麻

麻は古代より神聖な繊維とされ、注連縄(しめなわ)・紙垂(しで)・大幣(おおぬさ)などの祭具に用いられてきました。

神職の衣装や祭具の素材としても、麻は活用されています。

麻は、「清浄」の象徴として、用いられてきたのです。

しめ縄

麻は「素材としての有用性(丈夫さ)」に加え「宗教的記号性(清浄)」を帯びています


日本各地、麻の伝統

  • 東北(秋田・山形・岩手):お盆や年末に麻茎を乾かして焚く習俗があります。仏事・祖霊供養に結びつく形で伝承されています。一般社団法人日本森林インストラクター協会+1

  • 北陸・信越(新潟・富山・長野):小正月などに「あさがら焚き」「どんど焼き」などの行事で麻茎や稲わらを燃やし、無病息災を祈る風習が記録されています。JapanKnowledge

  • 近畿(奈良・和歌山):神棚や祭具を清める目的で麻苧を用いる儀礼の記録があり、神事と家庭の年中行事が密接につながっています。jstor.org

  • 九州・南西諸島(鹿児島ほか):麻栽培や麻繊維の加工、共同作業を記録した郷土史資料があり、地域的に麻を伝統的に用いられています。city.kagoshima.lg.jp


煙=媒介

「煙」は聖俗の境界を曖昧にし、祈りや浄化を媒介するといわれています。

日本における麻煙の使用もこの枠組みで説明され、麻は「燃やされることで空間を浄化し、祖霊や神を導く」役割を果たしたと考えられます。

おがら・ほうろくといった道具を用いて、折々に祭礼を行い、地域の儀礼としての麻の伝統が残っています。JapanKnowledge+1


まとめ ― 麻のヒと共に

ヒは、火、陽、霊。

おがら(麻茎)を迎え火・送り火で用いる慣行が日本各地にあり、その役割は「祖霊の導き」「穢れの除去」であると記録されています。一般社団法人日本森林インストラクター協会+1

神道においては、麻は神事のための標準的素材(しめ縄・大幣など)であり、麻の「清浄性」が信じられてきました。jstor.org+1

このように麻の火は、私たちの暮らしの中で、大切に扱われてきたのです。

これからも、麻と共にある伝統を、受け継いでいきたいと思います。


参考・主要出典

  • 「送り火」項目(日本大百科 / ジャパンナレッジ)。JapanKnowledge

  • 「迎え火・送り火とおがら」民俗解説(一般社団法人 森林インストラクター協会)。一般社団法人日本森林インストラクター協会

  • 「Shimenawa: The Sacred Rope」解説(nippon.com)。麻がしめ縄の伝統素材である点を整理。Nippon

  • Ōnusa / 大幣に関する概説(神道史料・英語ウィキペディア概説:参照文献含む)。ウィキペディア

  • 学術論文・論考:Shinto Symbols(JSTOR 所蔵の宗教学論考、麻の宗教的役割を言及)。jstor.org

  • 鹿児島市地域資料(民俗・農業に関する地方史資料、麻栽培・繊維加工の記録)。city.kagoshima.lg.jp