「麻」と呼ばれる素材には、いくつかの種類があるのをご存知ですか?
衣類でよく聞くのが、リネン。
麻紐として売られているのは、ジュート。
そのほかにも様々な「麻」があります。
わたしたち「麻の衣・忠兵衛」では、ヘンプを中心に、リネン、ラミーの生地を扱っています。
これらは繊維の原料となる植物そのものが違います。
違う植物が布となったとき、昔はそれぞれの個性が際立っていました。
ところがいまでは紡績技術が発展し、見た目や触り心地だけで識別するのはなかなかむずかしい。
それでも、「麻が好き」とおっしゃる方の中には、リネン派、ヘンプ派などと、こだわりが生まれることが往々にしてあります。
どうやら布の生い立ちや雰囲気で、好みのタイプがわかれるらしい。
ようこそ、奥深い麻の世界へ。
原料の植物は? 歴史は? 着心地は?
それぞれの違いを知って、麻を選ぶ楽しみを味わってください。
代表的な麻は3種類
服地として私たちがよく目にする麻は3種類。
リネン、ラミー、ヘンプです。
どれも植物の繊維を原料として織られた布ですが、植物の種類が違います。
共通するのはそのハリ感、丈夫さ、涼やかさ。
心地よさが抜群なのです。
そして〝聖なる布〟として古くから大切にされてきました。
総称されるだけあって共通項が多いものの、では違いはどこにあるのでしょう?
リネン、ラミー、ヘンプの個性を探っていきます。
リネン、ラミー、ヘンプの違い
麻はどこの国でも古い歴史を持ち、その土地に根づいてきた植物です。
人々の暮らしに寄り添い、いまも昔も活用され続けています。
その生い立ちが、それぞれの個性といってもいいでしょう。
では、どんな違いがあるのか一つひとつ見ていきましょう。
リネンの原料と特徴
リネンの原料はフラックス、日本名は亜麻(あま)です。
〝月光で織られた〟と讃えられ、ヨーロッパで古くから愛用されてきました。
ミイラを包んでいた布としても有名です。
ラミーやヘンプに比べ植物自体の背が60cm程度と低く、細くしなやかな繊維が取れます。
リネンには、どんな特徴があるのでしょうか。
リネンのメリット
リネンには、つぎの3つのメリットがあります。
- 使い込むほどにやわらかくなる
- 絶妙のコナレ感
- 汚れが落ちやすく衛生的
リネンの繊維は細く短いため、使うほどに柔軟性が増し、しなやかになります。
適度なハリとやわらかさをあわせもつ布に育ち、肌に心地よくより添い、洗練された落ち感、コナレ感が生まれます。
またペクチンという成分の効果で、汚れが染み込みにくく、落ちやすいのも特徴です。
その清潔感ゆえに、キッチン用品やインテリアファブリックに愛用されています。
やわらかくコナレた質感で、衛生的なリネン。
ファションだけでなく、生活用品としても愛用され続けています。
リネンのデメリット
リネンには、つぎのデメリットがあります。
- シワになりやすい
植物繊維ならではのハリによって、折れたところに圧力が加わると戻りにくい性質があります。
洗濯ジワや座りジワは避けられません。
洗う際に、脱水を軽めにする、伸ばしてから干す、などに注意することがオススメです。
あえてシワ加工をした生地を選べば、シワを表情として楽しむこともできます。
リネンを楽しむならワンピース
リネンで人気なのはワンピースです。
心地いい肌触りに全身包まれる快感が味わえます。
ヨーロッパテイストのデザインで、フェミニンでナチュラルな印象をまとってみてはいかがですか。
ラミーの原料と特徴
ラミーは、日本語では「苧麻(ちょま)」「からむし」と呼ばれ、原料も同じ名前です。
アジア全域で育ち、日本では縄文時代や弥生時代の遺跡からも発掘されています。
繊細で上質な布として江戸時代には献上品に選ばれていました。
手間暇かけて織り上げられたキラめくツヤ感が、高い価値を誇ります。
また天然繊維の中でもっとも強度が高く、水に濡れるとさらに強度が増します。
ラミーには、どんな特徴があるのでしょうか。
ラミーのメリット
ラミーには、つぎの3つのメリットがあります。
- 品のあるハリ感
- 洗濯を繰り返してもハリが長持ち
- 繊細なキラめき
ラミーのよさを味わうには、手織り布に触れるのがいちばんです。
天然繊維の中でもっとも強いといわれる繊維を細くさき、長い時間をかけ、ていねいに手紡ぎされる糸。
その糸で織られた布は、〝キラ〟と呼ばれる上質な輝きを誇り、極上のシャリ感、涼やかなハリ感をたたえます。

シャリ感がきわ立つ、からむし織(苧麻布)
越後上布(えちごじょうふ)、近江上布(おうみじょうふ)など、高級な着物としての伝統がいまでも受け継がれています。
強い繊維は繰り返す洗濯にも、ハリを失うことがありません。
長持ちするハリ、繊細なキラめきが、着る人をワンランク上の気分へと誘ってくれます。
ラミーのデメリット
ラミーには、つぎのデメリットがあります。
- 肌が敏感な方にはチクチクすることがある
繊維の強さが、肌にあたる感覚として残ることがあります。
いわゆる、「チクチク感」。
肌が敏感な方は、まずご試着して、ご自身の肌で感じてみましょう。
ラミーの気品をキレイめトップスで
ラミーを日常で楽しむなら、シンプルなデザインのトップスがオススメです。
機械紡績で織られた服地用のラミーなら、手織りの着物用よりも安価。
日本人が愛したシャリ感を気軽に楽しめます。
着るだけで、スッと背筋が伸びて、品のある印象がまとえます。
ヘンプの原料と特徴
ヘンプは、ラミーと同じく縄文時代の貝塚から発掘された太古からの麻です。
日本語では大麻(おおあさ・たいま)と呼ばれ、原料も同名。
日本で麻といえば、ヘンプ=大麻(おおあさ・たいま)をさしていました。
神社のしめ繩など、ご神事にも欠かせない植物です。
日本人の暮らしに古くより根づいていたヘンプですが、ファションとして人気が高まったのはヨーロッパから。
逆輸入的に日本に入り、年々注目度が高まっています。
ヘンプは2〜3mの大きさに成長し、繊維はとても丈夫です。
ヘンプには、どんな特徴があるのでしょうか。
ヘンプのメリット
ヘンプには、つぎの3つのメリットがあります。
- 美しいハリ感
- 使い込むとやわらかくなる
- サステナブルな素材
従来ヘンプは、繊維の丈夫さゆえにゴワゴワするとされてきました。
しかしいまでは、紡績技術の進歩によって、リネンのような、しなやかさをあわせもつ生地がつくられるようになりました。
強い繊維という特徴を生かしつつ、しなやかさも実現することで、適度なハリのあるやわらかな質感が楽しめます。
ヘンプの人気を高めたのが、エコロジカルな素材としての性質です。
化学肥料や農薬を必要としないため、環境にやさしい。
ヨーロッパのエコピープルが愛用するようになり、グリーンライフを目指す人々の間で定番の素材になりました。
しなやかなハリという品質の高さと、サステナブルであるという精神性の高さが、ヘンプの人気を支えています。
ヘンプのデメリット
ヘンプには、つぎのデメリットがあります。
- 大量生産に向かない
ヘンプは繊維が長く強靭なため、紡績機械との相性がよくありません。
大量生産には向かず、市場に出回ることが少ない素材です。
ヘンプ100%の生地をネットで探してみても、リネンほど種類がみつかりません。
ヘンプは、こだわりの職人たちがていねいに生産する、貴重な生地です。
ヘンプを着てリラックス
「なんか気持ちいい」。
ヘンプの感想でいちばん多いのは、これです。
ワンピース、トップス、パンツ、シャツ、どれでも、着ると開放感があります。
日本古来の神聖な布のせいか、「整う感じがする」という意見も。
まずは、着心地を楽しむ。
そして着るだけで地球環境に貢献しているという心地よさも味わう。
ヘンプを着て洋服を超えた喜びを、満喫しましょう。
リネン、ラミー、ヘンプの比較
布になるとあまり違いのない「麻」3種類
生まれの違うリネン、ラミー、ヘンプ。
布になると、どれもハリがあって涼やか。
そう、布になると質感の違いはあまりありません。
以前はわかりやすかった違いですが、紡績技術の発展により、いまでは麻の優れた特徴を、どの素材でも自在に生み出すことができるようになりました。
品質表示で「麻」と表示されるだけの場合、どの素材であるか識別は難しいほどです。
ちなみに、品質表示上の「麻」はリネンかラミー。
ヘンプは「指定外繊維」と表示されます。
麻をきちんと楽しみたいなら、ぜひこだわりのショップへ。
素材をきちんと把握し、表記しているショップで、麻の違いを味わいましょう。
ヨーロッパの人が愛し続けるリネンの心地よさ、和の美意識を極めたラミーの上質さ、日本人が太古から親しみ、進歩し続けるヘンプの新鮮さ。
3つの麻の違いを、ぜひ着て感じてみましょう。
あなたのお気にいりの麻がきっと見つかりますよ。