コラム

【ヘンプの日本史②】古代。「麻」の価値は、うなぎ登り。

By 2023年2月15日3月 12th, 2024No Comments

hemp縄文の昔から、麻は大切に育まれ、暮らしに生かされてきました。(参照・ヘンプの日本史①

時は流れ古代へ。日本が国として機能しはじめた時代では、麻はどのように私たちと関わってきたのでしょうか。

今回は、飛鳥時代から、奈良時代、平安時代の、麻の古代史をみていきましょう。

 

「税金」ならぬ「税麻」⁈

701年。日本ではじめて、体系的な法律「大宝律令」が整備されました。

そこには、麻や麻布が税の一部として、徴収されていたことが記されています。

飛鳥時代、法律が生まれたときから、麻は、税となるほどの価値があったのです。

さらに麻による納税は続きます。

平安時代中期に編纂された法律の書物「延喜式」によると、麻を納めていたのは、

  • 伊勢国(現・三重県)
  • 尾張国(現・愛知県西部)
  • 三河国(現・愛知県中東部)
  • 武蔵国(現・東京都埼玉県)
  • 上総国(現・千葉県中央部)
  • 下総国(現・千葉県北部)
  • 常陸国(現・茨城県一部)
  • 上野国(現・群馬県)
  • 下野国(現・栃木県群馬県一部)
  • 越前国(現・福井県北部)
  • 筑前国(現・福岡県北西部)
  • 日向国(現・宮崎県)
  • 肥後国(現・熊本県)
  • 信濃国(現・長野県)

「麻子(まし)」と呼ばれた「麻の種」を納めていたのは、

  • 常陸国(現・茨城県一部)
  • 上野国(現・群馬県)
  • 下野国(現・栃木県群馬県一部)
  • 信濃国(現・長野県)

となっています。

つまり、現在の関東地方を中心とする日本の広い範囲で麻がつくられ、特産品となっていて、税として徴収されていたのです。

麻が、価値あるものとして流通していたことがよくわかります。

 

「麻」は、日本の文化となる

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天平文化を中心とした、貴重な美術工芸品を所蔵する「正倉院」には、大量の麻布(大麻布・苧麻布)が保存されています。

布だけではなく、帯、紐、楽器の調緒(しらべお)、武具などがあり、麻が日本の文化の一部となり、重要な存在であったことがわかります。

 

「麻」は「風土記」にも登場

hemp721年に成立した「常陸風土記」には、常陸国では、広大かつ肥沃な土壌に、麻が育てられていたことが書かれています。

733年に成立した「出雲国風土記」には、「高麻山(現・島根県雲南市)」は、山上に麻の種を播いて育てていたことから、その名がついたことが記されています。

古代において、麻が盛んに栽培されていたことが、たくさんの書物から明らかになっています。

 

「万葉集」と「麻」

筆 「万葉集」は、7世紀後半から8世紀後半にかけて編纂された、わが国最古の歌集です。

その万葉集には、麻をうたった歌が多く収録されています。

古代は自然を畏怖し、敬い、山には山の神、川には川の神がいると信じていた時代です。

そういった自然に対する畏怖の感情だけでなく、自然を自然として讃美する感覚が生まれた時代でもありました。

人々が自然とともに生きていた時代であり、万葉集には自然が豊かに詠み込まれています。

人々の暮らしとともにあった「麻」が、たくさん詠まれるのも当然のことでしょう。

種をまく光景、収穫の様子に心震え、麻布や麻糸を題材として暮らしを愛でる。

営みの中にある「麻」が美しくうたわれ、現在にいたるまで、和歌という文化の形で残されています。

 

とても身近であり、加工することで価値が高まっていく「麻」。

古代の人々にとっても「麻」は、なくてはならない植物だったようですね。

 

(参考文献「地域資源を活かす・生活工芸双書・大麻(あさ)」)

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麻の伝統を現代に生かす、麻の衣「忠兵衛」