ウエルネスでファッショナブルな「HEMP」は、まるで海外からやってきたように新しいですが、実は太古の昔から日本で愛されてきたのです。
その歴史を紐解きましょう。
まずは縄文時代のお話から、はじまり、はじまり。
縄文時代から、日本人の暮らしとともにあったヘンプ麻
ヘンプは中国を経て日本に伝わりました。
縄文遺跡から出土した縄類や布類、果実などの分析が進められ、その到来は約1万年前にまで遡ると考えられています。
鳥浜貝塚(福井県)では、縄文時代草創期(約1万〜1.5万年前)の層からヘンプの縄が、また縄文時代前期(約5500年前)の層からもヘンプの縄や編み物、果実などが出土しています。
さらに沖ノ島遺跡(千葉県)からも、1万年ほど前の層からアサの果実4点が発見されています。
ときはくだり縄文時代中期から晩期。
その遺跡からもヘンプの繊維や果実などが出土されています。
この頃までには、東日本を中心とする日本の広い範囲にヘンプが分布していたことが判明。
縄文時代にすでにヘンプは、日本の地にしっかりと根づいていたのです。
縄文人は、ヘンプを余すことなく利用していた
縄文遺跡からの出土遺物や、発見された状況、現在の民族事例などから考えると、縄文時代において、ヘンプは暮らしの様々な場面で利用されていたようです。
果実は食用や油に、茎から得られる繊維は衣類、漁網、釣り糸、袋、綱、縄、弓弦などに、茎の芯は建築材に用いられました。
さらに繊維の屑はワタにしてから、あるいは衣類と編み込むことで保温材として活用されていたと考えらます。
また一部の土器からはヘンプの果実を煮炊きした痕跡が見られることから、火にかけるなどの加工も行われていました。
まさに、ヘンプは余すことなく利用されていました。
縄文時代の人々にとって、なんと価値ある植物だったのでしょう。
縄文人は、ヘンプを栽培していた?!
縄文時代の人々は、ヘンプだけでなく、カラムシ(ラミー麻)や、フジ、シナ、クズ、コウゾ、カジ、アカソなど、植物から採れる繊維も利用していました。
しかし、これらの植物は、自生地が限られる上に管理が難しく、加工においてもかなり手間がかかりました。
それに対してヘンプは生育が早く、さらに管理や加工が容易なことから広く普及することとなったのでしょう。
近年では、出土したヘンプの果実の大きさの違いに注目し、ヘンプには野生型と栽培型の2型があったという学説が打ち立てられました。
これが事実であるなら、縄文時代にはヘンプの管理、もしくは栽培が行われていたということ。
縄文人たちがヘンプ栽培をしていたというのは、なんともロマンな話です。
(参考文献「地域資源を活かす・生活工芸双書・大麻(あさ)」)
太古から脈々と続くヘンプの活用。
その担い手として、きょうも忠兵衛は麻の衣を仕立てています。