第5回|人の手と技を経て
ヘンプという植物が布になる
麻は、育てるだけでは服にはなりません。
収穫した茎を乾かし、繊維を剥がし、何度もたたき、裂いて、撚って、ようやく糸になります。
その糸を、さらに時間をかけて織り上げていく。
すべての工程に、根気と知恵と熟練の手しごとが込められています。
その過程を知ると、一枚の布がとても尊く見えてきます。
いまでは工場で、昔よりは効率よく生産できます。
しかし、ヘンプは麻の中でも工業生産がしにくいと言われ、限られたこだわりの職人だけが担う作業となっています。
ヘンプ100%の布が市場にあまり出回っていないのは、そのためです。
忠兵衛はその布を、顔のみえる人々の力を借りて、日本で衣に仕立てています。
大量に効率重視で生産される衣服とは違い、人の時間と感性が、何層にも折り重なっているのです。
手しごとの跡が残ることは、欠点ではなく、むしろ“息づかい”としての魅力。
布を見つめ、手に触れたとき、そこに関わってくれた多くの人たちへ、自然と感謝がこみあげてきます。
「服」とは、人と自然をつなぐ、静かな物語の結晶なのです。