コラム

第2話 EUのヘンプ繊維革命

By 2026年2月17日No Comments

— リネン文化の、その先へ —

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ヨーロッパの空気には、
どこか「布の記憶」が残っています。

フランス、ベルギー、リトアニア。
この地域では何百年ものあいだ、
リネン(亜麻)が日常の布として使われてきました。

ベッドリネンも、シャツも、テーブルクロスも。
麻は特別な素材ではなく、
暮らしの一部だったのです。

そして今、その文化の延長線上で、
静かに選ばれ始めている植物があります。

ヘンプです。

これは、新素材ブームではありません。
ヨーロッパにとってヘンプは、
“新しい挑戦”というより
“古い感覚への回帰”に近いのです。


■ データが語る、静かな構造変化

EUにおける産業用ヘンプの動向は、
European Industrial Hemp Association
(欧州産業用ヘンプ協会)が継続的に追跡しています。

その統計によると、
EU域内のヘンプ栽培面積は2010年代後半から拡大傾向にあり、
用途もCBD中心から、繊維・建材・バイオ素材へと分散しています。

特にフランスは、
現在ヨーロッパ最大級のヘンプ生産国。

ここで重要なのは、
「どれくらい増えたか」という数字以上に、

なぜ増えているのか。

という問いです。

理由はとても現実的です。

・気候変動による作物リスクの分散
・農薬使用量を抑えられる可能性
・輪作体系に組み込みやすい特性
・リネン設備との親和性

つまり、
ヘンプは“理想論”ではなく、
農業と産業の現場から選ばれている素材なのです。


■ ヨーロッパは「効率」より「持続」を選び始めた

https://innotechalberta.ca/facilities/decortication-fibre-processingplant/?utm_source=chatgpt.com

大量生産の時代、
繊維産業は「安く」「早く」「均一に」を追いかけました。

その結果、
環境負荷は増え、
服の寿命は短くなり、
人と服の関係は薄くなっていきました。

ヨーロッパはいま、
その反省点と正面から向き合っています。

・長く使える素材
・土を疲弊させない作物
・地域内で完結しやすいサプライチェーン

ヘンプは、これらの条件に
静かに当てはまっていきました。

派手さはありません。
でも、堅実です。

リネン文化を知っている土地だからこそ、
ヘンプの価値がすぐに理解された。

それはとても自然な流れでした。


■ 繊維は、思想を映す

布は、ただの物質ではありません。

どんな作物を選び、
どんな加工をし、
どこで縫製するか。

そのすべてに、
社会の価値観が現れます。

ヨーロッパで起きているヘンプ回帰は、
「環境にいいから使おう」という単純な話ではなく、

どう暮らしたいか
どんな未来を残したいか

という問いへの、ひとつの答えなのだと思います。


■ 私たちの服は、遠い畑とつながっている

店頭で服を手に取るとき、
私たちは色や形を見ます。

でも本当は、
その服は遠い異国の畑や、
乾いた風の吹く農地から始まっています。

どんな植物が育ち、
どんな土が使われ、
どんな思想で布になったのか。

それを知ることは、
エコになるためではなく、

自分の選択に責任を持つため。

ヘンプがヨーロッパで再び選ばれているのは、
便利だからではありません。

続けられるからです。


次回は、
CBDブームのあと、アメリカが見つめ直している
「繊維としてのヘンプ」について書きます。

熱狂のあとに残ったもの。
そこには、とても人間らしい選択がありました。