コラム

中国ヘンプの現在地

By 2026年2月20日No Comments

— 世界最大の供給地で起きている「質」への転換 —

「ヘンプの布は硬い」

もし、そんな印象を持っているとしたら、
その多くは“過去の中国ヘンプ”のイメージかもしれません。

実は今、世界のヘンプ繊維の大部分は中国で生産されています。
とくに雲南省を中心とした地域は、
気候と土壌の条件が整い、長年ヘンプ栽培が続いてきました。

つまり中国は、
世界最大級のヘンプ供給地。

けれど、その中国自身がいま、
大きな転換点を迎えています。

キーワードは、

「量」から「質」へ。


世界の工場だった国が、方向を変え始めている

長いあいだ中国は、
“世界の縫製工場”として機能してきました。

安く、大量に、早く。

それは確かに世界の消費社会を支えてきましたが、
同時に、

・環境負荷の増大
・品質の均質化
・価格競争の激化

という課題も生みました。

近年、中国国内ではこうしたモデルからの脱却が進んでいます。

特に繊維分野では、

  • 高付加価値素材への移行

  • 国内技術の高度化

  • 輸出型から品質型への転換

といった動きがはっきり見えるようになりました。

ヘンプも、その流れの中にあります。


「硬い麻」から「育つ布」へ

かつてのヘンプ布は、
確かにゴワつきがありました。

理由は単純で、

・繊維分離技術が粗かった
・紡績工程が未熟だった
・短時間で仕上げる前提だった

つまり、
“素材の声を聞く余裕がなかった”のです。

いま中国では、

  • 機械による繊維分離の精度向上

  • 酵素処理などによる柔軟化

  • 糸の均一化技術

といった工程改善が進み、

同じヘンプでも、
まったく別物のような布が生まれています。

それは、最初から柔らかい布ではありません。

時間と工程をかけて、育てられた布。

ここが、とても大切なポイントです。


中国は「安さ」で勝とうとしていない

いま中国のヘンプ産業が目指しているのは、
最安値ではありません。

「選ばれる品質」です。

世界のブランドや素材バイヤーは、
価格だけでなく、

・繊維長
・糸の安定性
・加工履歴の透明性

といった部分を見るようになっています。

それに応える形で、中国側も
工程管理やトレーサビリティの整備を進めています。

つまり中国は、
“安く作る国”から
“きちんと作る国”へと移行中なのです。

これは、とても大きな変化です。


素材は、国籍ではなく姿勢で選ばれる時代

「中国製だから」という時代は、終わりつつあります。

これからは、

どんな畑で育ち、
どんな工程を通り、
どんな思想で仕上げられたか。

その“姿勢”が問われます。

ヘンプという素材は、
特にそれが表に出やすい。

雑に扱えば、雑な布になる。
丁寧に扱えば、ちゃんと応えてくれる。

中国はいま、
その“丁寧さ”に本気で向き合い始めています。


私たちが触れている布の、その向こう側

私たちの手に触れる一枚の布。

その奥には、
雲南の畑があり、
工場の機械音があり、
人の手があります。

中国ヘンプの進化は、
決して遠い話ではありません。

あなたの服の手触りは、
すでにその変化の上にあります。